印刷会社で働く2代目社長の次世代印刷ブログ

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なぜ人はネットであることないこと書くのか



「食べログ」やらせ事件の裏に潜む心理とは?

 利用者による飲食店の人気ランキングサイト「食べログ」で、やらせ業者が順位操作を行っていたことが明らかになった。

 これは「食べログ」がやらせをしたわけではなく、まったくの別業者(多数ある)が飲食店に対し「料金を支払えば、食べログに高評価を投稿しますよ」と営業を掛けたという次第。「食べログ」運営会社のカカクコムが昨2011年末に特定した段階では、やらせ業者は39業者にも及んでいる。

 カカクコムでは、やらせ業者に法的措置も検討中。さらに「景品表示法」に抵触する可能性があるということで、消費者庁も調査に乗り出す事態になった。

 いずれにしろネットでの反響を見る限り、「やっぱり」「やらせがないほうがおかしい」という意見を多く目にする。やらせがあったこと自体については、あまり驚いてないのがメジャーのようだ。

 判明後、「この絶賛コメントもやらせだろ?」「このラーメン、10人が“日本でいちばんおいしい”と書いてあるけどウソっぽいよな」などと、ネットでは疑心暗鬼の嵐が吹き荒れている。

 以前からネットの「口コミ情報」には、高評価にしてもこき下ろしにしても不自然なものが多いという印象を持つ人が多くいる。

 ショッピングサイトでは、はっきり「購入後、感想を寄せてくださる方にはプレゼント進呈」と口コミを呼び掛けていたりもする。景品がもらえるとなると心理的にコメントは甘くなるだろう。これなどやらせとは違うが、甘いコメントが多いことを持って「圧倒的な高評価!」と宣伝で謳ってもいいのだろうか。疑問を感じる。

 こういった話題を取り上げたテレビの情報番組では、司会者が「やっぱり情報に頼らず、自分で考えて判断していくしかありませんね」と言っていた。

 まあおざなりで無難なまとめで、たしかにそうだ。だがひとつひとつ商品を手に取ったり飲食店に出かけて試食したりができないからこそ、ネットでほかの利用者の口コミに頼るシステムができあがったわけだ。

なぜ人はネットであることないこと発言するのか

 利用者コメントのほとんどはやらせではなく誠実で率直な感想なのだろうが、かねがね「本当は怪しいのでは?」と疑っていたところに今回の問題発覚があり、一気に猜疑心に火がついてしまった形だ。

 しかし改めて考えてみれば、猜疑心は今になって突然強まったわけではない。

 たとえば自分の例で恐縮だが、私が書いた文章やテレビでの発言は、ときどきツイッターなどで引用される。そこに「カネをもらってやっている」「利権が絡んでいる」などといったコメントが記されているのを見て驚くことが多い。もちろん事実無根だ。

 その背景を考えてみた。

 私の発言に関して「カネをもらっている」「利権が絡んでいる」などと、面と向かって誰かに言われたことはない。実名の手紙の場合でも、そういう内容が書かれていたものはない。したがって少なくとも私への反響を見る限り、これはおそらく「ネットならでは」と言ってよいだろう。

 だとすると、ここからさらに考えられることはなにか?

 ひとつは、「ネットには猜疑心の強い人たちが集まっている、あるいは積極的に掲示板などにコメントを書き込む人たちは疑い深い」ということだ。もちろん、これを証明する手立てはない。あくまで印象としての仮説だ。

ネットで「猜疑派」が増えるワケ

 たとえば、ものごとを100%全部信じたイノセントな意見をネットに書き込むより、「あの発言の背景には○○がある」などと書き込むほうが、「自分は事情通」な空気をネットの他のユーザーに発信できる。いわば自尊心を満足させる。そういう面があるだろう。

 また、掲示板やツイッターなど短文でしかも短時間に議論する場合、負けそうになるとか自分がよく知らない問題に関しては「あれは利権だろ○○の」と根拠レスの思いつきを書いておけば、「オレは無知」などと自尊心を傷つけることなくその場をやり過ごすことができる。

 こうした経験が積み重なると、自然と猜疑型ネット人格に遷移していくのではないか。

 そこに実際この「食べログ」のようなやらせ事件が起こるわけだから、「それ見たことか」とさらに猜疑心が強化されるわけだ。

 現実に事件が起きているのだからそういう反応もたしかに当然かもしれない。しかし他人の書き込み一般に猜疑的な目を向けるのは、いささか過剰防衛としていい。

 それは自分が書き込むときを考えてみれば明らかなはず。食べログだろうと掲示板だろうとブログだろうと、自分がネットに書き込む内容の、ほとんどはなんの「やらせ」もない感想だったり意見表明だったりするはず。そこに「利権」だの「カネ」が絡むことはないはずだ。

 そしてそれは他人の発言でも同様。それが現実だ。一部の悪質業者を見ただけで「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」では情けない。

「香山リカは○○」発言主と、リアルで遭遇

 もうひとつ考えらえれるのは、「人間あるいは現代を生きる人間は本来猜疑心の固まりで、実名社会ではそれを顔に出さずに暮らしている」ということだ。

 たとえば、面と向かったときには穏やかで気配りのできる人が、いったんネットとなると攻撃性むき出し、というケースは多い。

 「こいつにはこんなウラがある」など私に関するデタラメな推測や情報をネットで書き散らしていた人と、偶然対面したことがある。

 ある会合で隣り合わせとなり、いろいろ話しているうちに、その人が当の人物と判明したのだ。

 私は「こんな偶然があるものなんですね」と出会いの奇妙さに興奮し、「どうしてあんなウソを書くのですか」と責めるのも忘れてしまった。本人はどんなにか気まずかったかと思うが、それより印象的だったのは、“正体”が明らかになるまでの間、その人はずっとごく自然な笑顔で私との雑談に応じていたということだ。

 「あなたが、このところずっと私を困らせているあの人!」とわかっても、目の前の親切な人物とどうしても一致しなかった。

 では、どちらが本当の「その人」なのか。

 おそらくは「どちらも」ということになるのだろう。

 リアルな世界では、笑顔が素敵で言葉遣い丁寧。その人が、ネット世界では特定人物の言動にありもしない悪意を読み取り、口汚く流布する。どちらの「その人」も、真実なのだ。

高評価も低評価も「やらせ」と一蹴。悲しい「他者不信」

 人間は二重人格。表に見せる顔の他に、まったく別の一面があるものだ。ネット世界は、まさにその「別の顔解放区」と言ってよい。

 現実の生活では、私たちは名前や年齢、顔や肩書きを持つ存在として、自分の考えや意見を口にするときも、いつも思ったことをそのまま言うわけではない。「私は学校教師だから、こういった発言はふさわしくない」とか。それをネットの匿名世界では解放できるわけだ。

 匿名で気軽に意見を発信できるのがネット最大の長所だが、これが裏目に出る場合も多いことは、これまでも多くの人たちが指摘している。

 店では「おいしかったですよ」と笑顔で告げた客が、口コミサイトで「最低だ、二度と行かない」と書き込む、といった個人の二面性であれば、まだ人間についてあれこれ考えさせてくれる意義がある。しかしサクラを金銭で雇って真実とは違う情報を投稿する、という今回の問題は、あまりにも質が低く空しくなるばかりだ。

 私たちが「ネットにあった? ああウソだろ」と完全にネット不信に陥る前に、こんなセコすぎる仕組みはなんとかなくなってほしい。

 高評価があらかた「やらせ?」と信じてもらえない。低評価は「ネガキャン(ネガティブキャンペーン)」と決めつける。「口コミが多い」=「ステマ(ステルスマーケティング)」。——などとひねくれたものの見方が主流を占めてしまうのは、とても悲しいことだ。

 それではネットの「別の顔解放区」という利点が、どんどん魅力を失ってしまう。

 まあ考えてみれば、現実生活でも、どんどん人との信頼関係が薄れていきつつある。そんな時代であれば「ネットも信じられない」のは当然とも言える。現実とネットを席捲する「不信」をどうするか。これが今年2012年のテーマかもしれない。

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香山リカ(かやまりか)
精神科医・立教大学現代心理学部教授
1960年7月1日北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒。
学生時代より雑誌等に寄稿。その後も臨床経験を生かして、新聞、雑誌で社会批評、文化批評、書評なども手がけ、現代人の“心の病“について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。
近著に「世の中の意見が“私”と違うとき読む本—自分らしく考える」(幻冬舎)、「生きてるだけでいいんです。」(毎日新聞)など多数。

*「日経BPnet・電子書籍セレクト」より


http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120127-00000000-woman-bus_all
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