印刷会社で働く2代目社長の次世代印刷ブログ

印刷業界における次世代の技術や印刷手法、製本印刷・カラーコピー・オンデマンド印刷など、新しい印刷のニュースを取上げていきます。

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なぜこのタイミングで出版社を立ち上げたのか――南原竜樹さんの考え方



遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論:
 「新会社設立のご挨拶」という題名のメールが届いたのは、2011年11月のことだった。こんなビジネスに関するお知らせや派手なパーティの案内が、この方から届くことは珍しくなかった。どなたの話かというと、外車輸入からディーラー、インポーターと手掛け、日本テレビの『マネーの虎』で有名になった南原竜樹氏である。しかし、その日のメールの中身を見て、私は「えっ」と思わず声に出してしまった。
【他の画像】
 この度弊社オートトレーディングルフトジャパン株式会社のグループ会社を新しく立ち上げる運びになりましたのでご案内させて頂きます。

 何の会社かと申しますと、出版社となります。

 この逆風といわれている業界に、私が新風を吹き込んで、出版業界全体を元気にしたいと考えております。

 出版社をいま設立するというのが驚きだが、わざわざ「逆風といわれる業界に」と断り書きのように入っている。説明するまでもなく、出版業界の市場規模は1996年をピークに、長期に渡って右肩下がりの縮小が続いている。一方で、今年春にはAmazonの電子書籍端末「Kindle」の日本語版が登場すると言われている。不況と新勢力に板ばさみになって、風雲急を告げているのが出版業界である。

 そんな出版業界に、本の作り方から書店で売るという流通の部分まで、あえていままでのスタイルを踏襲して、「紙の本」をこれから出していきますというのである。

 無謀とも思えるプランを進めている南原氏と、たまたま今年の1月、久しぶりにお会いした。私の親しくしているYさんが、ドイツ人のカーデザイナーが描いた絵のオンラインギャラリーを始めたので南原氏に相談したら、「ちょっと会いましょう」となったのだった。そのときに、立ち上げた出版事業についても聞いたのだが、「そのことは本に書いたから読んでください」とだけ言われた。

 そうやって、彼の出版社ATパブリケーションの2冊目の本として出たのが、彼の著書『「絶対無理」なんて「絶対」ない!』(南原竜樹著、ATパブリケーション刊)という本である。この本、書名だけ見るといかにも人生論・根性論を書き連ねた本のように見えるが、中身はまるで逆である。南原氏らしい起業家向けの教科書というべきもので、確かに、本の半分くらいのページが「なぜ、いまごろ出版社を立ち上げたか?」について書かれている。

●ビジネスはシンプルであれ

 現在では数々の事業を手掛ける南原氏だが、2005年に、彼の会社オートトレーディング ルフトジャパンは経営危機に陥っていた。そのさなかの6月のある日、会社の資産が整理され、借金を背負ってこの後の人生を送ることになるかどうかが決まるというような日に、私は南原氏と一緒にいた。まだ彼の会社の資本金が1000万円くらいだったときに車を買ったのがきっかけで、ごくたまに電話で話すような関係になっていたが、その日は直接会おうという話になった。

 六本木一丁目の泉ガーデンの地下1階で待ち合わせると、南原氏は“私服は一着もない”という例のスーツ姿で待っていた。そして、彼にしては珍しく、「4月末に社員全員に解雇通告をして、5月に社員に挨拶をしたとき、本当に嗚咽で声にならなかった」などという話をした。「たくさん机はあるのに、いるのは自分だけなんだよ。事業を整理するというのは、本当に大変なことだ」とも言った。

 「自動車メーカーは、過去20年間、こんな形でつぶれたことなんかない。倒産するなら予兆のようなものもあるし、年間20万台も生産しているメーカーがいきなりつぶれるなんて考えられない。これが、本当に失敗なのか?」。英国のMGローバーの経営破たんが、インポーターだったオートトレーディングを窮地に追いやったのだった。

 私が南原氏を好きな理由は、原稿を読み上げるようなロジカルな喋りから、スーッと何かが見えてくることが多いからだ。車を海外で転がして安く輸入しているとか、本国発表前のベンツのニューモデルを売り始めたとか、イタリア人窃盗団と組んでいるんだよと冗談まじりに言ったりするような部分もあるのだが、要するにフレームワーク的な思考に長けている。

 この窮地の後、南原氏がビジネスで奇跡ともいえる復活を果たしたきっかけは、「AT-1」だろう。中古車の個人売買を支援するというサービスだが、まさにビジネスはシンプルであれという鉄則に沿っている。自分が車を売るときには考えもしなかったのだが、以下のロジックがそのまま事業化されたものである。

・個人売買は、ユーザーにとっていいことづくめだが、唯一のマイナスは手続きの煩雑さだ

・この手続き部分を誰かがやってくれれば、個人売買は一般に浸透する

・個人売買では、業者ではかかる消費税がかからない(しかも、今後消費税は上がることが予想される)

 このようにして新事業を生み出してきた南原氏の次の事業が、今回の出版社設立であるわけだ。

●儲かっていない業界にこそ改善の余地がある

 その詳細については、もちろん『「絶対無理」なんて「絶対」ない!』を買って読んでいただくのが最もよいのだが、読みどころはやはり、彼ならではの淡々とした現状分析と、それに対する答えが正論であることだ。

 「チェッカーモーターズでは一ヶ月100台販売していました。在庫はその倍持っていなければなりません。一台を500万円として、200台の在庫を抱えている必要があったのです。さらに、自動車整備士や受付、営業など100人くらい人を雇わなければなりません。それに比べて、出版業界は、実を言うと閉鎖的に見えて、素晴らしく自由度が高いわけです」

 とかく閉鎖的と言われる出版業界だが、彼によるとこんなによい業界なのだそうだ。ちょっとまとめてみると、次のようなことだそうだ。

・取次と契約できれば、1人しかいない出版社でも全国で売ることができる

・書店の棚では、大手出版社と並んで置かれる

・購入する側は出版社を問わず手にとる

・車は一家に1、2台だが、本は何冊でも買う

・100冊の本を出す場合でも、社屋を100倍にする必要はない

・ネットで容易に宣伝できる時代が来た

・世界に出ることも視野に入れやすい

 そして、出版業界に参入する最大のポイントは、周囲から「不況」あるいは「逆風」と考えられていることだという。「儲かっている業界は、儲かる仕組みで成功しているので、改善点を見つけるのは難しい。それに対して、儲かっていない業界というのは、すでに現在の方法ではうまくいかないということが見えているわけです。ビジネスの仕組みのどこかに、改善の余地が必ずあります」。それを見つけて、改善できれば、儲かっていない業界の中でもビジネスができる。

 南原氏の出版社の重要なコンセプトは、「出版のハードルを3段くらい下げる」ことだという。世の中には、本を出せる、出すべき人がたくさんいる。これまで本が生まれなかった条件をひとつずつつぶしていくことで、そこに新しい需要と供給のマーケットが創出する。「身近に本を出す人が増えれば、おのずと本が話題になることも増えて全体が盛り上がる」という発想も興味深い。

 実は、南原氏以外にも、いま出版に参入する人がいないわけではない。出版業界誌『新文化』のK氏から聞いて「おーっ」と思ったのは、お茶の水のレコード店「ディスクユニオン」が、出版事業に参入したそうだ。レコード販売から、レーベルを立ち上げ、雑誌を作り、本も用意してあげたら自社の顧客の満足度は上がるだろう。JAGAT(日本印刷技術協会)の中部地区のセミナーでご一緒させていただいた、大阪の株式会社シー・レップの北田浩之社長の話にも教えられることが多かった。同社は、子供服の専門出版社を買収し、通販サイトを立ち上げて売上げを伸ばしている。

 しかし、南原氏のATパブリケーションは、より直球で出版というものに取り組もうとしているのである。世の中には、本の未来についての議論があふれている。ネット書店のAmazonは当然としても、グーグル、アップルといったネット時代の旗手たちが真剣に取り組んできていて、出版という世界自体もメディア全体の大きな動きの中にあるともいえる。ATパブリケーションが成功するのかどうかはまだ評価できる段階ではないとして、南原竜樹氏の出版論、いかがだろう? 【遠藤諭、アスキー総合研究所】



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120321-00000073-zdn_mkt-ind
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